講演会「人が回復するのに締め切りはありません」


この2月11日に「東京自殺防止センター主催」の講演会に行ってきました。
講演のタイトルは「人が回復するのに 締め切りはありません」
講師 夏かり郁子(精神科医) 著書 「心病む母が遺してくれたもの」他一冊

◎講演内容を、自分のメモを元に記しました。(お願い・・・以下の文章は、表現・内容の誤りがある可能性があります。省略している部分もあります。正しくは、夏かり郁子さんの著書をお読みください。)

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私は「語りべ」として、自分にとっても・医師としても・人間としても「回復」とは何かについてお話をさせていただきたいと思います。私は浜松医科大学に入った時、母が統合失調症でしたのでそれから逃げるために、その症状のまだ発生しない子どもを扱う「児童精神医学」を専門科目として選びました。

ある日、大学の教授が「死ぬ瞬間・著者キューブラ・ロス 昭和50年発行」を、薦めてくださいました。その理由は著者が女性であり、当時の女医の立場は非常に低かったため、「終末期医療に行け!」という理由でした。
その本の内容は、ガン患者の「死にたくない!」という切実な言葉が綴られており、「常に死にたい!」と思っていた私には衝撃でした。

また、「わが家の母は ビューキです・著者中村ユキ サンマーク出版」の漫画の中に、「精神病の病になった時の気持ちは、外出時に突然雨が降って来た時、傘の中に入れて下さるのではなく・・・、一緒に濡れて欲しい・・・」という言葉がありました。中村ユキさんは、「精神医療が良くなるために」と、実名で出版されています。
私はその漫画を読んで、人は過去の繋がりの中で生きている、本人の努力に係わらず、一度もつまづかない人生はないのではないかと思いました。それで、私は医者になって30年目に、自分の母のことを公表することにいたしました。

当時5歳の私と母の二人の生活。父は愛人の家に行っていました。母は強迫性の統合失調症で、その後の8年間は私に毎日同じ夕食を用意し、自分は煎餅とコーヒーとタバコだけでした。家の中は24時間雨戸で閉め切っており、衛生状態は最悪でいつのまにか猫やネズミが家の中にいました・・・。母は洗濯が嫌いで一度も洗濯をしないシーツは、小動物のフンや尿だらけでした。
母はその後強制入院をさせられ、私は中学・高校では強烈ないじめに合い、成人後には親や私をいじめた相手を見返したいと思い、医学部に入学しました。

そのころの私は、父が離婚し後妻さんとその連れ子二人と生活している家庭に、一緒に暮らすことになりました。後妻さんに「パジャマって洗うものなの?」と聞いたら「あなたはどんな生活をしてきたの?」と言われました。私は別人のように家庭的になった父をみて困らせたくて、「良い子」から反転して、あらゆる反抗を繰り返しました。

リスクカット・過食と拒食の繰り返し・ここにいらっしゃるかたには申し訳ありませんが不倫も重ね、2回の自殺未遂をしました。そのようなことを繰り返していた私は精神科に入退院し、どこの医局も引き受けてくれませんでした。それでもペーパー試験には強い私は、どこにも行けないのなら「精神科」にと!今は天職だと思います。
そのころ、始めての親友の在日韓国人の方と出逢い、その方とのふれあいの中で、「自暴自棄はヤメヨウ」と思わせてくれました。そして今の夫と知りあいました。

今から2年前に、始めて母のカルテを取り寄せました。それを見て「母は結婚する前から精神科に通っていた!」と知り、「犯人は病気と、その病気への世間の偏見!」だと思いました。そして殺人と自殺は紙一重と思いました!
母が遺してくれた手帳も見ました。それを読みながら、「回復とは和解のプロセス」と思いました。皆さん、私の今着ている洋服を見て下さい。私は講演をするときにはいつもこれを着ています。これは母が50年前に手作りしたスーツです。多少私の体に合わせるために手直しをしましたが、母はこの洋服をテレビで一瞬だけ見た、日本で一番有名な女性が来ていたデザインを真似て、あれよあれよと言う間に作りました。皆さん、その女性はどなただと思いますか?・・・「美智子様です。」
私にとってこの母の手作りの服を着ることは「母との和解」の象徴、そのものだと思います。誰にでもあるその人との良い思い出・・・かわいらしく素敵な母を思い泣きました。

統合失調症と向き合うこと・・・その人の時間の中でいつか納まりがついていくもの・・・回復は大きなきっかけがあったからじゃない・・・日々の繰り返しの生活の中から・・・そして一般の皆さんのご理解が必要なのです。
精神疾患になる原因は今もわかっていません。だから遺伝するかどうかもわかっていません。なので、薬も「仮説=恐らく○○と言う病に効くでしょう」ということで、処方されています。

例えば昼夜逆転している精神疾患のご家族をかかえて、大変な思いをされている方にお伝えします。正論を言ってもダメです。でも「それでいい」と言うのもダメです。どこの地域にも「家族会」というものがあります。先人たちの生活の中から編み出された具体的なアドバイスが、とても大事なのです。どうぞそういう社会資源を活用されてください。

医学は患者さんを修理しているのです。決して新品にはならないのです。前とは違う自分をかかえて生きていると思ってください。そして「共同意思決定=患者さんと医療スタッフが必要な情報を共有し、患者さんの価値観に沿って共に治療方針を決めること」が、最近とても重要視されています。自分の人生の決定について自立をしていくのです。この薬は何ですか?副作用は?と、自分から発信をしていっていただきたいと思っています。

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さなえより・・・夏かり先生は、おだやかで丁寧で優しいトーンでお話してくださり、現在は発達障害の方々を診ていらっしゃるとのことです。
先生のお話を伺っている中で、一筋の光が私に差し込みました。それについては、ゆっくりゆっくりこれから考えて行きたいと思っています。

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